大根は、葉に近いところほど甘く、先端に行くにつれ辛味が増すということをご存じでしょうか?
その特性を理解した上で、根本はサラダに、中間部位は煮物に、先端の部分はピリッと辛い大根おろしに……と使い分けている方も多いことでしょう。
本記事では、部位によって辛味が異なる理由、辛味の正体となる成分、健康維持に期待できるその効能までを、順を追って説明します。

大根の辛味成分!「イソチオシアネート」

大根をはじめとするアブラナ科の野菜に多く含まれる「イソチオシアネート」。
これが、大根の辛味成分といわれるものの正体です。

大根に含まれる「イソチオシアネート」は、葉に近い部分には少なく、先端へ行くほどその含有量は増えます。
葉に近い部分と比較すると、およそ10倍とも言われています。
その理由は諸説ありますが、地面の中を深く掘り進んでいく先端部分は、虫に食われたりしないように辛味が強いという説もあるんだとか。
外敵から身を守るため」という理由からか、外側が辛く、真ん中へいくほど甘くなるのも特徴です。

また、生の大根をかじったときよりも、大根おろしの方が辛く感じるのにも理由があります。
すりおろす時に細胞が壊れ、基になる「イソチオシアネート」と、酵素の一種である「ミロシナーゼ」という物質が混ざり合って化学反応を起こし、ワサビや辛子と同じ辛味成分である「アリルイソチオシアネート」が生成されるので、辛味が増すということです。
つまり、辛くない大根おろしを食べたいときには「ゆっくりやさしくおろす」、あるいは「汁気があまり出ないよう、粒の大きな大根おろしにする」のがポイントです。
反対に、ピリッと辛味を楽しみたい場合は、「手早く、粒が小さくなるよう」おろせばOK。
「アリルイソチオシアネート」は揮発の特性を持ちます。
辛味を好む方は食べる直前に、苦手な方はおろしてからしばらく置いておくのが良いでしょう。

健康分野でも注目! 「イソチオシアネート」の効能とは?

大根の辛味の正体は、根元から先端へ行くほどに含有量が高くなる「イソチオシアネート」という成分だということが分かりました。
同じアブラナ科のキャベツやブロッコリー、かぶなどにも多く含まれていることが知られていますが、この「イソチオシアネート」、実は、健康や化学の分野でも近年注目されている栄養成分なんです。

まず挙げられるのが、食欲増進抗菌作用、さらには血液をサラサラにしてくれるという嬉しい効能も。
さらには、その高い抗酸化作用から「発がん」を抑制する効果があるとも言われています。
日本の食卓では、しばしば焼き魚に大根おろしを添えて食べますよね。 実はとても理にかなったことで、焼き魚の焦げに含まれる発がん性物質の働きを大根おろしが抑制してくれているのです。
このように「イソチオシアネート」は、日頃から食物の食べ合わせなどを意識して、積極的に摂取したい栄養素のひとつであると言えます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
大根は、部位や食べ方によって栄養分や味が異なる野菜だということをお分りいただけたと思います。
しかし、「体にいいから」という理由で、辛味の苦手な人が無理にしっぽの部分を生で食べなければいけないという事はなく、おのおのが野菜の特性を理解したうえで、無理なく、なによりも「おいしく」季節の野菜をいただくのが一番なことに違いはありません。
特に冬の大根は夏に収穫される大根よりも水分が多く、甘みが強いのが特徴です。
栄養たっぷりの冬野菜で、今年も寒い季節を乗り切りましょう!